みなさん、運動はしていますか?
健康に良いのはわかってるけど、いざやるとなると中々身体が動かない…
さて、今回はそんな“運動”と、運動にまつわる“乳酸”についての解説。
乳酸は溜まっても疲労しない?
さて、長い間定説として囁かれていた“運動すると乳酸が体内に溜まり、乳酸が増えると疲労が増す”という説はご存知でしょうか。
色々なメディアで取り上げられ続けてきた説ですので、そのまま覚えている方も多いかと思います。
これが実は誤りだったんですね。
一体どういうこと?
「え、じゃあ乳酸って溜まっても疲れないの?」
「というか乳酸ってそもそも何なの?」
今回はそのお話をするついでに、運動に関する基本的な機序からおさらいしておきましょう。
運動の基本
そもそも運動をする時に行われるのが、“筋肉を動かす”ことです。
そして“筋肉を動かす”というのは、具体的に言うと筋肉を収縮・弛緩させることでもあります。
さてこの筋肉の収縮・弛緩を行うためには、大きなエネルギーが必要となるのをご存知でしょうか。
筋肉を動かすためには筋肉の収縮が必要、
筋肉の収縮にはエネルギーが必要!
でもどこからエネルギーを調達する?
筋肉の収縮にはエネルギーが必要
ここで筋収縮における重要な存在を紹介しておきましょう。
それが、アクチンとミオシンというタンパク質。
アクチンとミオシン、なんとこの二つのタンパク質だけで筋肉を構成するタンパク質の80%を占める、まさしく筋肉の化身といっていい存在です。
筋肉の化身…?
さて、本題となる筋肉の収縮の機序。
運動をするには筋肉を収縮させる必要があり、
筋肉を収縮させるためにはエネルギーが必要!
でも“エネルギー”と一言で言っても、具体的にどうやって調達してるものなの?
そこで登場するのが先ほど紹介したアクチン&ミオシン。
実は筋肉が収縮する際、ミオシンに含まれるATP分解酵素がATPをADPに分解、この時にATPからエネルギーが放出されます。
そしてこのエネルギーを源として、筋収縮が起こるのです。
???
わかるようなわからないような…
ここでおさらい!そもそも“ATP”とは
はい、ここで色々ややこしい原因となっているATPについて解説。
ATP(アデノシン三リン酸)とは「生命のエネルギー通貨」とも呼ばれる物質。
耳慣れない単語が並んでいて、説明も何だか抽象的、ちょっとわかりにくいですね。
そもそもこのATPくんは一体何者なのか?
まずATPが何から出来ているかを知っておきましょう。
ATPは、私たちが食事から摂取した糖や脂質、一部のタンパク質が体内で変換されて出来た姿です。
そしてATP(アデノシン三リン酸)という名前は、アデノシン+3つのリン酸基が結合した分子であることを示しています。
糖や脂質が変換されて出来てるんだね!
…アデノシンやリン酸基に関しては「そういうのがあるんだね」って感じで眺めとこうかなぁ(諦め)
アデノシンやリン酸基、覚えなくて全然構いません。
とにかく
「運動には筋収縮が必要で、
筋収縮にはエネルギーが必要で、
そのエネルギーを手に入れるにはどうやらATPが関わってくるんだな」
という認識で大丈夫です。
「ATPがどうエネルギーを生み出すことになるの?」
さてATPの生い立ちをざっくり知ることができましたが、
今回の肝心な点である「筋収縮に使うためのエネルギーをどうやってATPが生み出すのか」というところは見えていませんね。
実はこのATP、先ほどアデノシンと3つのリン酸基が結合した姿だと説明しましたが、
このリン酸基同士が結合した部分に、エネルギーが蓄えられているのです…!
まさかのそんなところに備蓄
なるほど結合部にエネルギー…
あれ、結合部にエネルギーが蓄えられているのなら、このエネルギーを取り出したい時はどうするのがいいでしょうか?
結合部にエネルギーを溜めてるなら、
結合部ごと分解しちゃえばいいのでは?
その通り。
ATPは分解することで、エネルギーを取り出せるようになるわけです。
もう少し詳細に説明すると、
ATPをADP(アデノシン二リン酸)&リン酸に加水分解(水と反応することで起こる分解反応)することで、
この結合部に蓄えられていたエネルギーが放出され、我々の生命活動に生かされるのです。
ATPは分解することで、蓄えられていたエネルギーが放出されるんだね…!
このことを踏まえて、先ほどの“筋肉の収縮”についてをもう一度読んでみたいと思います。
②筋肉の収縮にはエネルギーが必要!
…でもそのエネルギーはどこから調達しよう?
③そうだ、ATPを分解してエネルギーを取り出そう!
大まかな流れとしてはこのような感じですね。
より具体的に触れると…
筋肉を収縮させる際、ミオシン(アクチンと共に筋肉の8割を占めるヤツです)に含まれるATP分解酵素が、ATPをADPに分解。この時にエネルギーが生み出されます。
そしてこの時生み出されたエネルギーを源として、
ミオシンで出来たフィラメント(筋繊維)の間に、アクチンで出来たフィラメントが滑り込む「滑走」という動きが可能になります。
この「滑走」により、筋肉の収縮が起こる…
これこそが筋収縮の一連の流れとなります。
②糖や脂質がATPに変換される
③ATPを分解することでエネルギーが放出する
④そのエネルギーを利用して筋繊維が「滑走」
⑤この「滑走」により筋肉が収縮
⑥筋肉が収縮をすることで運動ができる
以上が運動についての解説となります。
なお、ATPが生み出されるまでの詳細(クエン酸回路や電子伝達系、解糖系)に関してはさらに長くなるので、一旦保留とさせてください。
さて、ここまでが運動の基本的な機序についてのお話でした。
ここからはいよいよ本題(やっと)、
“乳酸って疲労に繋がる物質じゃないの?”疑惑について触れていこうと思います。
……が、それについては混乱を避けるため別記事として投稿したいと思います。お楽しみに。
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